猫伝染性腹膜炎
今回感染症シリーズ第九回。
今回は猫の感染症~猫伝染性腹膜炎~について解説します。
猫伝染性腹膜炎
猫伝染性腹膜炎ウイルスが原因となる病気です。
猫伝染性腹膜炎は腹膜炎だけでなく、さまざまな症状を示す病気です。発症するとほとんどの猫が死亡する致死性の高い疾患です。
猫腸コロナウイルスの感染から、猫の体内で突然変異を起こし、猫伝染性腹膜炎ウイルスになると言われています。
〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症
〇 猫白血病ウイルス感染症
〇 猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症
〇 猫腸コロナウイルス感染症
〇 猫汎白血球減少症
〇 猫ヘモプラズマ症
原因は猫伝染性腹膜炎ウイルス(feline infectious peritonitis virus:FIPV)です。
猫伝染性腹膜炎ウイルスは猫コロナウイルスの一種で腸炎を起こす猫腸コロナウイルスと血清学的に区別できないため、ほぼ同一のウイルスであると考えられています。
今のところ、猫腸コロナウイルスに感染したのちに、猫の体内で猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異すると言われています。
発症には抗体介在性免疫増強が関連しているようで、感染に際して作られる抗体によってウイルスの増殖を爆発的に起こしてしまう状態が起きるようです。コロナウイルスに感染したら必ずしも猫伝染性腹膜炎を発症するわけではありません。
猫腸コロナウイルスは感染猫の糞便中に排出され、経口的に感染します。
元気消失、食欲低下、発熱、嘔吐、下痢、貧血、黄疸といった症状を起こします。腹膜炎を起こすウェットタイプと、腹膜炎を起こさないドライタイプがあります。
腹膜炎は黄色い粘稠性のある特徴的な腹水が貯留します。血液検査所見としては高グロブリンを呈し、肝障害、腎障害の所見が確認されることもあります。また結膜炎、角膜炎、ブドウ膜炎などの目の症状や、けいれんといった神経症状を起こすこともあります。
▪ 高グロブリン血症
▪ 腹膜炎
▪ 黄疸
一つの検査のみで確定診断する方法はありません。臨床症状やさまざまな検査を組み合わせることにより診断していきます。
以前は外部の検査センターによって、FCoV抗体検査とタンパク電気泳動により高γグロブリン血症によって診断していました。現在は病変部からの検体によるPCR検査により診断精度は上がっています。
さまざまな治療法が研究されているものの、いまだ完全な治療法は確立されていません。
猫インターフェロンやプレドニゾロンによって治療効果があったとの報告もありますが、ほとんどの場合著効は見られないことが多いです。
死亡率が非常に高く、完全な治療法もなく、有効なワクチンも開発されていません。多頭飼育で腸コロナウイルスの感染率が高いことが報告させていることから、トイレなどの環境の消毒が重要です。
2022年12月9日 6:23 PM | カテゴリー : コラム