猫カリシウイルス感染症

今回感染症シリーズ第二回。
今回は猫の感染症~猫カリシウイルス感染症~について解説します。

猫カリシウイルス感染症


猫カリシウイルス感染症は猫ヘルペスウイルス、猫クラミジアとともに猫の上部気道感染症であり、一般的に〝猫風邪〟と言われる呼吸器症状を起こす感染症です。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症

〇 原因は?

原因は猫カリシウイルス(feline calicivirus)の感染です。主な感染経路は、基本的にはヘルペスウイルスと同様に感染猫からの直接な飛沫感染ですが、ただ症状を示している猫からだけでなく、無症状の不顕性感染の猫や、症状から回復した猫からも感染します。感染した猫は症状が回復した後にも、一か月以上ウイルスを排出します。

またカリシウイルスは環境下でも長く生存することが可能であり、直接感染猫と接触しなくても感染する可能性があります。

ヘルペスウイルス、クラミジア、マイコプラズマ、ボルデテラとの混合感染もあります。

経口、経鼻、結膜からウイルスが侵入します。

〇 症状は?

ヘルペスウイルスと同様に、気道の感染症であるため、主に〝風邪〟の症状を示します。ウイルスは鼻、口腔内、呼吸器粘膜で増殖します。くしゃみ、鼻水といった呼吸器症状起こすと同時に、口腔内の水泡・潰瘍を形成するため、流涎を伴った口内炎・舌炎が特徴的な症状です。喉の炎症により声がかれることも多くあります。ヘルペスウイルスと比較すると少し重症であることが多く、発熱や食欲不振といった症状もしばしば見られます。

肺まで増殖が進むと、肺炎へと進行します。またまれに関節の滑膜でも増殖が起こるため、関節炎といった症状を示すこともあります。

▪ 口内炎
▪ 舌炎
▪ よだれ
▪ 発熱
▪ 肺炎
▪ 関節炎

より重症になり、致死率の高い強毒全身性猫カリシウイルス感染症も報告されています。

〇 診断は?

特徴的な口内炎・舌炎、声かれ、発熱などの臨床症状で推測して仮診断します。

血液検査によるカリシウイルスの抗体検査や鼻汁や目ヤニなどのぬぐい液によるPCR検査などの検査と臨床症状を総合的に判断することによって確定診断は可能ですが、実際には検査による診断はあまり行われていません。

〇 治療は?

基本的には症状に合わせて内科治療を行います。抗ウイルス薬、細菌の混合感染と二次感染予防のための抗生物質を投与します。カリシウイルスの治療のメインはインターフェロン療法です。インターフェロンには抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、免疫調節作用があることが知られています。猫インターフェロンωは猫カリシウイルス感染症の治療薬として認可されています。
呼吸器症状がある場合はネブライザー療法を行います。
症状は通常2~3週間で消失していきます。

発熱により、食欲不振や脱水といった全身状態が悪化していることが多く、点滴や栄養補助が必要になることもあります。

▪ インターフェロン療法
▪ ネブライザー

 


ヘルペスウイルスとともに多くみられる感染症です。無症状でもウイルスを排出したり、環境中でも感染力が維持されるので、人が感染を広げてしまう可能性があります。外で猫を触ったときにはしっかり消毒をすることや、ワクチンに入っている病気ですのでしっかりワクチンを投与し予防することが重要です。