犬ジステンパーウイルス感染症

今回から犬の感染症シリーズ。
今回は犬の感染症~犬ジステンパーウイルス感染症~について解説します。

犬ジステンパーウイルス感染症


 

犬の主な感染症は、犬ジステンパーウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型感染症)、犬パラインフルエンザウイルス感染症、犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型感染症)、レプトスピラ症などがあります。
犬ジステンパーウイルス感染症は非常に感染力が高く、感染すると致死率も非常に高い病気であり、子犬の命を脅かす怖い感染症です。

〇 原因は?

原因は犬ジステンパーウイルス(Canine distemper virus:CDV)の感染によって起きます。鼻汁や目ヤニ、クシャミなどによっておこる飛沫感染や、便、尿、感染動物との直接接触することにより、口や鼻や目からウイルスが侵入し感染します。
口や鼻から侵入したウイルスはリンパ節で増殖し、血流を介して呼吸器、消化器、皮膚、神経といった細胞へ感染していきます。

犬やフェレットといったペットだけでなく、タヌキなどの他のイヌ科動物、イタチ、アライグマなど多くの野生動物にも感染が確認されています。

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〇 症状は?

症状は発熱、鼻水や咳、目ヤニ、結膜炎といった風邪のような症状から始まるので、ケンネルコフといった一般的な風邪症状と間違えてしまうこともあります。その後目ヤニや鼻水が膿状になり、下痢や嘔吐といった消化器症状がおこり脱水、衰弱、元気食欲廃絶などの症状がでます。

鼻や肉球が角化して硬くなってきたり、膿疱などの湿疹がでる皮膚症状を呈することもあります。ブドウ膜炎、視神経炎などの目の症状も併せて起こすこともあります。

ジステンパーウイルスが脳に侵入し、ジステンパー脳炎を起こし、けいれんといった神経症状がでます。神経症状がでると死亡率は非常に高くなります。回復しても将来的に後遺症として神経症状を呈する場合もあります。

▪ 目ヤニ、鼻水
▪ ブドウ膜炎
▪ 肉球の角化、皮膚炎
▪ 消化器症状
▪ 神経症状

〇 診断は?

院内で行う検査としては、目ヤニや鼻水、糞便などから採取したスワブで行う簡易抗原検査で診断します。
外部の検査センターでの抗原を検出するPCR検査、抗体を検出する抗体検査も含めて診断します。

〇 治療は?

治療に関してはウイルス自体への効果的な治療薬はなく、出ている症状に対しての対症療法と、二次感染に対する抗生物質の治療のみです。
実際には脱水に対しての点滴、嘔吐に対する制吐剤、下痢に対する下痢止め、二次感染に対する抗生物質、けいれんに対しての抗けいれん剤の投与などです。

 


感染力も非常に高く、発症するとほとんど死亡してしまうといったかなり怖い病気です。確立された治療法もありません。予防は混合ワクチンを接種することです。
タヌキやイタチなどの野生動物にも感染するため、しっかりワクチンで予防することが重要です。