猫汎白血球減少症

今回感染症シリーズ第七回。
今回は猫の感染症~猫汎白血球減少症~について解説します。

猫汎白血球減少症


猫汎白血球減少症は非常に激しい嘔吐・下痢を主とする消化器症状を示す感染症です。
パルボウイルスによるウイルス性腸炎であり、白血球が減少することから“汎白血球減少症”と呼ばれています。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症
〇 猫白血病ウイルス感染症
〇 猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症
〇 猫腸コロナウイルス感染症

〇 原因は?

原因は猫パルボウイルス(Feline parvovirus:FPV)の感染です。
FPVは、感染猫の排泄物にウイルスが排出され、糞便、尿、血液から経口、経鼻的に摂取して感染が成立します。母猫から経胎盤でも感染します。潜伏期間は4~5日で、腸陰窩で増殖、複製していきます。
ウイルス自体が環境中での生存能力が非常に高く、排泄された後も数カ月は感染能力があるため非常に注意が必要な感染症です。消毒薬に対しても非常に強く、一般的な消毒薬であるアルコールでは死にません。
感染力も非常に高く同じ飼育環境内で爆発的に感染していきます。

 

〇 症状は?

まずは元気食欲が低下し、発熱がみられます。その後腸でウイルスが増殖していき、消化器症状がでるようになります。激しい下痢と嘔吐が主な症状です。血液検査の所見としては白血球が顕著に減少します。白血球の減少に伴う免疫力の低下がおき、他の感染症にかかりやすくなるといったことも見られます。
あまりにひどい水様性下痢、血便と頻回の嘔吐により、激しい脱水症状を呈し重症化し、死亡率の非常に高い病気です。
子猫で消化器症状がある場合は、必ず疑って検査すべき病気です。

▪ 消化器症状
▪ 下痢
▪ 嘔吐
▪ 白血球減少

〇 診断は?

院内の検査ではパルボウイルス抗原を検出する検査キットを使用して診断します。ただ簡易キットであるため診断精度が高いとは言えません。併せて血液検査を行い、白血球が減少していることも診断に役立ちます。
外部の検査センターによって行う、糞便のPCR検査によってウイルスを検出する方法であればかなり正確に診断することができますが、結果が出るのに日数がかかります。

〇 治療は?

治療は主に対症療法により、状態を安定させていくことが重要です。
脱水に対して点滴を行うこと、嘔吐に対して制吐剤を使用すること、免疫力が低下に対して抗生剤を使用すること、また抗ウイルス薬も使用します。
通常一種間程度で症状は改善していきますので、そこまでしっかり集中的に治療することが重要です。

 


汎白血球減少症の原因であるパルボウイルスから守るためにはワクチン接種を行うことです。特に子猫の時期に感染すると一気に重症化して命にかかわる病気です。適切なワクチン接種を行ってください。
また新しく猫ちゃんを迎え入れた際には健康チェックされるまでしっかり隔離すること、環境を消毒することが重要です。