猫白血病ウイルス感染症

今回感染症シリーズ第四回。
今回は猫の感染症~猫白血病ウイルス感染症~について解説します。

猫白血病ウイルス感染症


猫白血病ウイルス感染症は免疫機能の抑制により様々な症状を示します。また白血病やリンパ腫といった血液系の腫瘍となることもあります。
猫白血病ウイルス自体を倒す薬はないので、ウイルスを体から完全に排除することは難しく、発症すると死亡率が非常に高い病気です。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症

〇 原因は?

猫白血病ウイルス(feline leukemia virus:FeLV)の感染によって引き起こされる感染症です。唾液や鼻汁、血液から感染するため、猫同士の直接の接触が原因です。具体的にはグルーミングや同じ食器の使用、ケンカや交尾によって感染すると言われています。かなり濃厚な接触をしない限り簡単に感染するわけではありません。
ケンカによる咬傷の場合は高確率で感染するようです。

また母親が感染している場合は胎盤感染し、多くの場合死産や流産を引き起こします。胎盤感染以外にも分娩や母乳、グルーミングといった保育中にも感染します。

ウイルスに接触する年齢が感染の成立に関係しており、免疫系が発達していない若齢であるほど感染が成立し、生涯ウイルスを持ち続ける持続感染になりやすいようです。仔猫がウイルスに接触した際の感染成立は80%以上と言われています。

症状も若齢なほど出現しやすく重症化しやすいため、寿命にも大きく影響します。

 

〇 症状は?

仔猫が感染した場合は免疫系が確立していないため、持続感染になりやすく、発症した場合も重症化することが多いのですが、成猫が感染した場合は免疫系がしっかりしているので、ウイルスが排除され、持続感染にならないことがあり、感染しても生涯無症状に過ごすこともあります。

ウイルスは口腔咽頭で増殖し、続いて骨髄細胞に感染していきます。
感染初期には発熱やリンパ節の腫大、骨髄抑制に伴う白血球減少、貧血などが見られます。持続感染が起こり発症した場合は免疫不全症状を示し、口内炎や歯肉炎、発熱といった症状を示します。他の感染症の症状が出やすくなったり、猫伝染性腹膜炎やヘモプラズマなどの感染症の発症に関与している可能性も示唆されています。免疫不全による症状は特異的なものはなく、さまざまな症状が起こります。

また猫白血病ウイルスという名前の由来が示すように、白血病やリンパ腫などのリンパ系血液系腫瘍を発症の原因にもなります。特に腫瘍では縦郭型のリンパ腫が多く、胸水が貯留し呼吸困難を起こしていることが多く見られます。

▪ 免疫不全
▪ 口内炎、歯肉炎
▪ 貧血
▪ 白血球減少
▪ 白血病
▪ リンパ腫

〇 診断は?

診断は血液検査で行います。採血した血液により院内でのキットにより迅速に診断できます。当院では猫免疫不全ウイルスと猫白血病ウイルスが同時に検査できるキットを使用しています。猫白血病ウイルスの場合、ELISA法による抗原を検出します。感染後すぐに検査はできませんが、4週間経過すれば検査を行うことが可能です。

一回目の検査で感染が確認され陽性となった場合、自分の免疫により陰性になる場合があるため、3~4か月で再検査を行ってください。

感染病用迅速検査キット - SNAP FIV/FeLV Combo - Idexx Laboratories ... IDEXX LABORATORIES

 

〇 治療は?

基本的には先に書いたようにウイルスをゼロにすることはできず、治療法は確立されておらず、根治治療はありません。感染初期には抗生物質による二次感染予防や点滴などの対症療法、インターフェロンの投与などが主な治療です。

免疫不全により他の感染症の症状が出た際には、その治療を行います。
リンパ腫や白血病といった腫瘍と診断した場合は、抗がん剤が適応となります。

以上のように感染が成立し発症してしまうとあまり有効な治療法はないため、感染予防が最も重要です。当院では感染が成立しやすい仔猫の時期には外出の有無に関係なく、白血病ウイルスが予防できる五種混合ワクチンをおススメしています。

▪ 根治治療はない
▪ 対症療法、二次感染予防、インターフェロン
▪ それぞれの感染症の治療
▪ 抗がん剤療法
▪ ワクチン

 


猫白血病ウイルス感染症は特異的な治療法はなく、一度感染が成立するとウイルスを体から排除することもできません。そのため感染予防を行うことが重要です。外出する猫ちゃんはもちろん、外出がない場合でも感染が成立しやすく、感受性が高い仔猫の時期には白血病ウイルスのワクチン接種をおススメしています。新しく猫を飼育する場合や外出によるケンカをしてしまった場合などはウイルス検査をしましょう。