猫クラミジア感染症

今回感染症シリーズ第三回。
今回は猫の感染症~猫クラミジア感染症~について解説します。

猫クラミジア感染症


猫クラミジア感染症は猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス感染症とともに猫の上部気道感染症です。特に結膜に症状を示し、結膜炎を起こします。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症

〇 原因は?

原因は猫クラミジア(Chlamydophilia felis)の感染です。主な感染経路は、猫同士の直接の接触によるものであり、目ヤニから細菌が感染するとされています。クラミジアは体外では生存できないため、接触以外の感染経路はないと思われます。
細菌の排出は通常二か月ほど続きますが、中には持続的に排出する場合もあるようです。

ヘルペスウイルスやカリシウイルスと同じように、他のウイルス、細菌との混合感染もあります。

 

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〇 症状は?

猫クラミジアは粘膜で増殖します。感染初期には特に結膜で増殖するため、結膜炎の症状を示します。通常片側の目で症状が発現しますが、その後両方の目に進行していきます。結膜の症状は比較的重く、結膜の充血も強く結膜浮腫が特徴的な所見です。
結膜の症状と比較して、他の呼吸器症状はまれであり、ほとんどの場合が目の症状だけしか起こしません。
また目の症状も結膜だけに限局して起こり、ヘルペスウイルスのように角膜潰瘍を起こしたりすることはありません。

▪ 結膜炎
▪ 結膜浮腫
▪ 他の呼吸器症状はまれ

〇 診断は?

診断は結膜と眼脂の細胞診で行います。検査方法は、マイクロブラシ等で結膜から細胞を採取し、スライドガラスに塗布後染色して顕微鏡で観察します。猫クラミジアに感染している場合は、結膜上皮に典型的な細胞質内封入体が確認されます。封入体は感染後7~14日にのみ確認されるため、それ以外の時期には細胞診では診断できません。

その際には、外部の検査センターによって行う、結膜のぬぐい液によるPCR検査も有用な検査です。

〇 治療は?

治療は内科治療、特に飲み薬の治療を行います。テトラサイクリン系の抗生物質の治療が有効です。ただテトラサイクリン系の点眼薬は販売されていないため、点眼での猫クラミジアに効果的な治療薬はあまりありません。そのため点眼は他のウイルスや細菌の二次感染予防に使用する補助的な治療です。

猫クラミジアはドキシサイクリンの内服で治療します。その際の注意点として、猫は食道が蠕動しないため薬が食道内に長時間停滞してしまうと、食道炎の原因となってしまいます。ひどい場合は食道狭窄になる場合もあります。内服後には水を飲ませたり、フードを食べさせたりして、確実に食道から胃の中に落とすようにしてください。

▪ 飲み薬による治療
▪ 点眼薬は補助的
▪ 食道炎に注意

 


結膜炎の原因として非常に多くみられる感染症です。通常の三種混合ワクチンでは予防できないため、飼育環境に野良猫が多かったり、多頭飼育といった感染が起こりやすい環境の場合は、猫クラミジアが予防できる五種混合ワクチンの接種をおすすめします。