猫免疫不全(FIV)感染症

今回感染症シリーズ第五回。
今回は猫の感染症~猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症~について解説します。

猫免疫不全(FIV)ウイルス感染症

(猫エイズウイルス感染症)


猫免疫不全ウイルス感染症は発症すると免疫機能の低下により様々な症状を示します。通称〝猫エイズ〟でよく知られている病気です。
根本的な治療はありませんが、猫白血病ウイルス感染症と比較すると、発症するまでの期間が長いことが多く、寿命を全うできることも少なくありません。感染力も比較的弱いとされています。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症
〇 猫白血病ウイルス感染症

〇 原因は?

猫免疫不全ウイルス(feline immunodeficiency virus:FIV)の感染によって引き起こされる感染症です。主に唾液中にウイルスが存在しているため、猫同士の直接の接触、特にケンカによる咬傷によって感染します。母猫から仔猫への伝播や、グルーミング、食器の共用などでも感染する可能性がありますが、感染力は比較的低いようです。

ほとんどが咬傷による感染ですので、ケンカをする可能性が高い屋外飼育や外出する未去勢のオス猫で感染することが多いようです。

〇 症状は?

ウイルスはリンパ球やマクロファージなどに感染します。感染後一か月程度の潜伏期間の後に起こる急性期では、発熱や白血球減少、貧血といった血液の症状やリンパ節腫大などの症状が確認され、この間に抗体が作られることによって感染後2か月経過すると検査で陽性を示すようになります。
急性期が数か月続いた後、比較的長い期間に渡って症状を示さない無症候キャリア期になります。

発症すると免疫不全を起こします。最もよく起こる症状は口内炎であり、口内炎に伴うよだれ、口臭があり、時に出血する場合もあります。その他、免疫不全によって呼吸器感染症や血液系の感染症など様々な症状を示し、亡くなってしまうこともあります。

▪ 免疫不全
▪ 口内炎、歯肉炎
▪ 貧血
▪ 白血球減少
▪ 無症候キャリア

〇 診断は?

診断は血液検査で行い、猫白血病ウイルス検査と同時に検査できるキットにより院内で迅速に診断できます。猫免疫不全ウイルスは、ウイルスに対する特異的抗体を検出します。陽性が出た場合は、体内に猫免疫不全ウイルスの抗体があることを意味するので、感染の可能性があります。体内に抗体ができるまで1~2か月程度かかるため、感染が疑われる場合は約2か月後に検査を行う必要があります。

仔猫では母猫からの移行抗体が検出される場合があるため、陽性が出たときには生後6か月以降に再検査を行ってください。

感染病用迅速検査キット - SNAP FIV/FeLV Combo - Idexx Laboratories ... IDEXX LABORATORIES

移行抗体の問題や、より早期に診断したい場合は、検査センターに依頼する検査もあります。ウイルスの遺伝子を検出するPCR検査であり感染から三週間で診断することが可能です。院内のキットによる検査とともに状況に合わせて診断に使用します。

 

〇 治療は?

猫白血病ウイルス感染症と同じように、根治治療はありません。そのため症状に応じて治療する対症療法が基本です。抗生物質による二次感染予防や点滴などの対症療法、インターフェロンの投与などが主な治療です。

特に口内炎、歯肉炎を起こした場合は、痛みのためにフードが食べられなくなる場合があります。体重が減少してしまうほど採食できないことも多く、痛みのコントロールが重要です。

免疫不全により他の感染症の症状が出た際には、その治療を行います。

根治治療はないので感染を予防することも重要です。ほとんどがケンカによる咬傷で感染するため、外出させないようにすることで感染予防することが可能です。
ストレスにより体の抵抗力が低下し、感染症を引き起こしやすくなるため、猫免疫不全ウイルスに感染した場合はできるだけストレスを軽減した生活を心がけることにより長生きさせてあげることが可能です。

▪ 根治治療はないため感染予防が重要
▪ 対症療法、二次感染予防、インターフェロン
▪ それぞれの感染症の治療
▪ 口内炎の痛みのコントロール

 


猫免疫不全ウイルス感染症には根本的な治療はありません。そのため感染しないことが最も重要です。ほとんどがケンカによる咬傷での感染ですから、外に出さないようにすることが一番の感染予防になります。発情期の外出を予防するには去勢手術や避妊手術が有効なこともあるでしょう。
感染が確認された場合は、できるだけ発症を抑えるためにストレスの少ない生活を心がけ、体調が悪い場合などは早期に治療するために早めにご来院いただくことをおススメします。

猫白血病ウイルス感染症

今回感染症シリーズ第四回。
今回は猫の感染症~猫白血病ウイルス感染症~について解説します。

猫白血病ウイルス感染症


猫白血病ウイルス感染症は免疫機能の抑制により様々な症状を示します。また白血病やリンパ腫といった血液系の腫瘍となることもあります。
猫白血病ウイルス自体を倒す薬はないので、ウイルスを体から完全に排除することは難しく、発症すると死亡率が非常に高い病気です。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症

〇 原因は?

猫白血病ウイルス(feline leukemia virus:FeLV)の感染によって引き起こされる感染症です。唾液や鼻汁、血液から感染するため、猫同士の直接の接触が原因です。具体的にはグルーミングや同じ食器の使用、ケンカや交尾によって感染すると言われています。かなり濃厚な接触をしない限り簡単に感染するわけではありません。
ケンカによる咬傷の場合は高確率で感染するようです。

また母親が感染している場合は胎盤感染し、多くの場合死産や流産を引き起こします。胎盤感染以外にも分娩や母乳、グルーミングといった保育中にも感染します。

ウイルスに接触する年齢が感染の成立に関係しており、免疫系が発達していない若齢であるほど感染が成立し、生涯ウイルスを持ち続ける持続感染になりやすいようです。仔猫がウイルスに接触した際の感染成立は80%以上と言われています。

症状も若齢なほど出現しやすく重症化しやすいため、寿命にも大きく影響します。

 

〇 症状は?

仔猫が感染した場合は免疫系が確立していないため、持続感染になりやすく、発症した場合も重症化することが多いのですが、成猫が感染した場合は免疫系がしっかりしているので、ウイルスが排除され、持続感染にならないことがあり、感染しても生涯無症状に過ごすこともあります。

ウイルスは口腔咽頭で増殖し、続いて骨髄細胞に感染していきます。
感染初期には発熱やリンパ節の腫大、骨髄抑制に伴う白血球減少、貧血などが見られます。持続感染が起こり発症した場合は免疫不全症状を示し、口内炎や歯肉炎、発熱といった症状を示します。他の感染症の症状が出やすくなったり、猫伝染性腹膜炎やヘモプラズマなどの感染症の発症に関与している可能性も示唆されています。免疫不全による症状は特異的なものはなく、さまざまな症状が起こります。

また猫白血病ウイルスという名前の由来が示すように、白血病やリンパ腫などのリンパ系血液系腫瘍を発症の原因にもなります。特に腫瘍では縦郭型のリンパ腫が多く、胸水が貯留し呼吸困難を起こしていることが多く見られます。

▪ 免疫不全
▪ 口内炎、歯肉炎
▪ 貧血
▪ 白血球減少
▪ 白血病
▪ リンパ腫

〇 診断は?

診断は血液検査で行います。採血した血液により院内でのキットにより迅速に診断できます。当院では猫免疫不全ウイルスと猫白血病ウイルスが同時に検査できるキットを使用しています。猫白血病ウイルスの場合、ELISA法による抗原を検出します。感染後すぐに検査はできませんが、4週間経過すれば検査を行うことが可能です。

一回目の検査で感染が確認され陽性となった場合、自分の免疫により陰性になる場合があるため、3~4か月で再検査を行ってください。

感染病用迅速検査キット - SNAP FIV/FeLV Combo - Idexx Laboratories ... IDEXX LABORATORIES

 

〇 治療は?

基本的には先に書いたようにウイルスをゼロにすることはできず、治療法は確立されておらず、根治治療はありません。感染初期には抗生物質による二次感染予防や点滴などの対症療法、インターフェロンの投与などが主な治療です。

免疫不全により他の感染症の症状が出た際には、その治療を行います。
リンパ腫や白血病といった腫瘍と診断した場合は、抗がん剤が適応となります。

以上のように感染が成立し発症してしまうとあまり有効な治療法はないため、感染予防が最も重要です。当院では感染が成立しやすい仔猫の時期には外出の有無に関係なく、白血病ウイルスが予防できる五種混合ワクチンをおススメしています。

▪ 根治治療はない
▪ 対症療法、二次感染予防、インターフェロン
▪ それぞれの感染症の治療
▪ 抗がん剤療法
▪ ワクチン

 


猫白血病ウイルス感染症は特異的な治療法はなく、一度感染が成立するとウイルスを体から排除することもできません。そのため感染予防を行うことが重要です。外出する猫ちゃんはもちろん、外出がない場合でも感染が成立しやすく、感受性が高い仔猫の時期には白血病ウイルスのワクチン接種をおススメしています。新しく猫を飼育する場合や外出によるケンカをしてしまった場合などはウイルス検査をしましょう。

猫クラミジア感染症

今回感染症シリーズ第三回。
今回は猫の感染症~猫クラミジア感染症~について解説します。

猫クラミジア感染症


猫クラミジア感染症は猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス感染症とともに猫の上部気道感染症です。特に結膜に症状を示し、結膜炎を起こします。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症

〇 原因は?

原因は猫クラミジア(Chlamydophilia felis)の感染です。主な感染経路は、猫同士の直接の接触によるものであり、目ヤニから細菌が感染するとされています。クラミジアは体外では生存できないため、接触以外の感染経路はないと思われます。
細菌の排出は通常二か月ほど続きますが、中には持続的に排出する場合もあるようです。

ヘルペスウイルスやカリシウイルスと同じように、他のウイルス、細菌との混合感染もあります。

 

お昼寝子猫の無料の写真素材(フリー素材)をダウンロード - ぱくたそ

〇 症状は?

猫クラミジアは粘膜で増殖します。感染初期には特に結膜で増殖するため、結膜炎の症状を示します。通常片側の目で症状が発現しますが、その後両方の目に進行していきます。結膜の症状は比較的重く、結膜の充血も強く結膜浮腫が特徴的な所見です。
結膜の症状と比較して、他の呼吸器症状はまれであり、ほとんどの場合が目の症状だけしか起こしません。
また目の症状も結膜だけに限局して起こり、ヘルペスウイルスのように角膜潰瘍を起こしたりすることはありません。

▪ 結膜炎
▪ 結膜浮腫
▪ 他の呼吸器症状はまれ

〇 診断は?

診断は結膜と眼脂の細胞診で行います。検査方法は、マイクロブラシ等で結膜から細胞を採取し、スライドガラスに塗布後染色して顕微鏡で観察します。猫クラミジアに感染している場合は、結膜上皮に典型的な細胞質内封入体が確認されます。封入体は感染後7~14日にのみ確認されるため、それ以外の時期には細胞診では診断できません。

その際には、外部の検査センターによって行う、結膜のぬぐい液によるPCR検査も有用な検査です。

〇 治療は?

治療は内科治療、特に飲み薬の治療を行います。テトラサイクリン系の抗生物質の治療が有効です。ただテトラサイクリン系の点眼薬は販売されていないため、点眼での猫クラミジアに効果的な治療薬はあまりありません。そのため点眼は他のウイルスや細菌の二次感染予防に使用する補助的な治療です。

猫クラミジアはドキシサイクリンの内服で治療します。その際の注意点として、猫は食道が蠕動しないため薬が食道内に長時間停滞してしまうと、食道炎の原因となってしまいます。ひどい場合は食道狭窄になる場合もあります。内服後には水を飲ませたり、フードを食べさせたりして、確実に食道から胃の中に落とすようにしてください。

▪ 飲み薬による治療
▪ 点眼薬は補助的
▪ 食道炎に注意

 


結膜炎の原因として非常に多くみられる感染症です。通常の三種混合ワクチンでは予防できないため、飼育環境に野良猫が多かったり、多頭飼育といった感染が起こりやすい環境の場合は、猫クラミジアが予防できる五種混合ワクチンの接種をおすすめします。

猫カリシウイルス感染症

今回感染症シリーズ第二回。
今回は猫の感染症~猫カリシウイルス感染症~について解説します。

猫カリシウイルス感染症


猫カリシウイルス感染症は猫ヘルペスウイルス、猫クラミジアとともに猫の上部気道感染症であり、一般的に〝猫風邪〟と言われる呼吸器症状を起こす感染症です。

〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症

〇 原因は?

原因は猫カリシウイルス(feline calicivirus)の感染です。主な感染経路は、基本的にはヘルペスウイルスと同様に感染猫からの直接な飛沫感染ですが、ただ症状を示している猫からだけでなく、無症状の不顕性感染の猫や、症状から回復した猫からも感染します。感染した猫は症状が回復した後にも、一か月以上ウイルスを排出します。

またカリシウイルスは環境下でも長く生存することが可能であり、直接感染猫と接触しなくても感染する可能性があります。

ヘルペスウイルス、クラミジア、マイコプラズマ、ボルデテラとの混合感染もあります。

経口、経鼻、結膜からウイルスが侵入します。

〇 症状は?

ヘルペスウイルスと同様に、気道の感染症であるため、主に〝風邪〟の症状を示します。ウイルスは鼻、口腔内、呼吸器粘膜で増殖します。くしゃみ、鼻水といった呼吸器症状起こすと同時に、口腔内の水泡・潰瘍を形成するため、流涎を伴った口内炎・舌炎が特徴的な症状です。喉の炎症により声がかれることも多くあります。ヘルペスウイルスと比較すると少し重症であることが多く、発熱や食欲不振といった症状もしばしば見られます。

肺まで増殖が進むと、肺炎へと進行します。またまれに関節の滑膜でも増殖が起こるため、関節炎といった症状を示すこともあります。

▪ 口内炎
▪ 舌炎
▪ よだれ
▪ 発熱
▪ 肺炎
▪ 関節炎

より重症になり、致死率の高い強毒全身性猫カリシウイルス感染症も報告されています。

〇 診断は?

特徴的な口内炎・舌炎、声かれ、発熱などの臨床症状で推測して仮診断します。

血液検査によるカリシウイルスの抗体検査や鼻汁や目ヤニなどのぬぐい液によるPCR検査などの検査と臨床症状を総合的に判断することによって確定診断は可能ですが、実際には検査による診断はあまり行われていません。

〇 治療は?

基本的には症状に合わせて内科治療を行います。抗ウイルス薬、細菌の混合感染と二次感染予防のための抗生物質を投与します。カリシウイルスの治療のメインはインターフェロン療法です。インターフェロンには抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、免疫調節作用があることが知られています。猫インターフェロンωは猫カリシウイルス感染症の治療薬として認可されています。
呼吸器症状がある場合はネブライザー療法を行います。
症状は通常2~3週間で消失していきます。

発熱により、食欲不振や脱水といった全身状態が悪化していることが多く、点滴や栄養補助が必要になることもあります。

▪ インターフェロン療法
▪ ネブライザー

 


ヘルペスウイルスとともに多くみられる感染症です。無症状でもウイルスを排出したり、環境中でも感染力が維持されるので、人が感染を広げてしまう可能性があります。外で猫を触ったときにはしっかり消毒をすることや、ワクチンに入っている病気ですのでしっかりワクチンを投与し予防することが重要です。

インスタグラム

インスタグラムはじめました。
かく動物病院(@kaku_animal) • Instagram写真と動画

猫ヘルペスウイルス感染症

今回から感染症シリーズ。
今回は猫の感染症~猫ヘルペスウイルス感染症(猫ウイルス性鼻気管炎)~について解説します。

猫ヘルペスウイルス感染症

(猫ウイルス性鼻気管炎)


猫の主な感染症には猫ヘルペスウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症、猫パルボウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス感染症、猫クラミジア感染症、猫コロナウイルス感染症などがあります。猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルス、猫クラミジアは猫の上部気道感染症であり、一般的に〝猫風邪〟と言われるように呼吸器症状を起こす感染症です。

〇 原因は?

原因は猫ヘルペスウイルス1型(feline herpesvirus-1)の感染によって起きます。鼻汁や目ヤニ、クシャミなどの飛沫に含まれるウイルスに直接接触したり、飛沫を受けることによって口や鼻や目からウイルスが侵入し感染します。
侵入したウイルスは鼻やのどの粘膜上皮で増殖して、そこから結膜や気管の粘膜へと広がっていきます。

ウイルスの環境中での耐性はそこまで強くないため、環境中ではあまり長く感染力を維持できず、同じ環境内に感染した猫がいる場合に感染が成立することが多いです。

一度感染が成立すると、症状から回復してからもウイルスが体内に残りキャリアとなります。再発することにより他の猫への感染源となります。

猫カリシウイルス、猫クラミジア、マイコプラズマ、ボルデテラといった他の呼吸器感染症と併発することも多くあります。

〇 症状は?

上部気道の感染症であるため、主に〝風邪〟の症状を示します。ウイルスは鼻、結膜、咽頭、気管などの呼吸器粘膜で増殖するため、粘膜表面でびらんや潰瘍を起こし、鼻炎、結膜炎、気管支炎を引き起こします。

クシャミ、鼻水、結膜炎、目ヤニ、流涙が主な症状であり、それに伴う元気消失や食欲不振が起きたり、重症の場合は発熱、発咳、呼吸困難、肺炎といった症状が起こります。仔猫やシニア猫、他に免疫力が低下する要因がある場合は死に至ることもありますが、通常1~2週間程度で良化していきます。

眼の症状は特徴的な結膜の充血と浮腫があり、角膜にも障害を及ぼします。角膜炎が重症化した場合は、角膜潰瘍によって角膜の白濁や眼球の成長不良といった後遺症が残ることもあります。

ヘルペスウイルスは一度感染すると、三叉神経に潜伏して生涯体内に残り、季節の変わり目やストレスなどの体の抵抗力が低下することにより再発を繰り返したり、症状が治まらない慢性的な鼻炎や結膜炎を起こすこともあります。

▪ 目ヤニ、涙
▪ 結膜炎
▪ 角膜炎、角膜潰瘍
▪ クシャミ
▪ 鼻水

〇 診断は?

一般的には特徴的な上部気道の症状、クシャミ、鼻水、目ヤニ、結膜炎によって仮診断を行い治療することがほとんどです。

血液検査によるヘルペスウイルスの抗体検査や鼻汁や目ヤニなどのぬぐい液によるPCR検査などを総合的に判断することにより診断することができます。一定の確率で擬陽性がでたり、検査のタイミングによっては偽陰性がでてしまったりといった診断精度の問題や診断までに時間がかかることなどの問題があり、実際の臨床現場では検査による確定診断はあまり行われていないのが現状です。

〇 治療は?

基本的には症状に合わせて内科治療を行います。飲み薬としては直接ウイルスを抑えるための抗ウイルス薬とリジン、細菌の混合感染と二次感染予防のための抗生物質を投与します。
結膜炎に対しては抗ウイルス薬の点眼や眼軟膏を併用します。目ヤニを取り除いたり、自分でこすって目に傷をつけないようにカラーをしたりといった管理をしっかりすることが重要です。新しく発売された猫ヘルペス用点眼剤〝イドクスウリジン点眼液〟である『IDU』も非常に効果的です。角膜潰瘍を起こした場合、手術が必要になることがあります。

クシャミ、鼻水といった上部気道の症状に対してネブライザー療法を行います。ネブライザーは薬剤を霧状にして鼻の奥や気管に直接薬剤を届ける治療です。飲み薬と併用することによってより大きな効果が期待できます。

他には点滴やインターフェロンも状況によって使用します。

▪ 抗ウイルス薬(内服、点眼)
▪ イドクスウリジン点眼薬『IDU』
▪ リジン
▪ ネブライザー

 


非常に多くみられる病気で、多くの猫に感染のリスクがあります。ワクチンに入っている病気ですのでしっかりワクチンを投与し予防することが重要です。一度感染してしまうと、体内からウイルスをゼロにすることは非常に難しく、再発を繰り返してしまったり、結膜炎や鼻炎が慢性化して治らないといった状態になってしまうことがあるので注意しましょう。

三尖弁閉鎖不全症

今回は犬の心臓病~三尖弁閉鎖不全症~について解説します。

三尖弁閉鎖不全症


僧帽弁閉鎖不全症は心臓病の中で最も多く発生する病気ですが、三尖弁閉鎖不全も比較的見られる状態です。三尖弁閉鎖不全も僧帽弁閉鎖不全と同じく、三尖弁がしっかり閉じれない症状を表している用語であり、病名ではありません。一般的には、高齢の小型犬において、僧帽弁とともに三尖弁も粘液種様変性を起こして発生することが多くあります。僧帽弁閉鎖不全と比較するとすぐに命に関わる状態ではないためか、一般的に僧帽弁閉鎖不全のほうがよく知られている病気です。
僧帽弁閉鎖不全症はこちら

〇 原因は?

三尖弁閉鎖不全症は、三尖弁を形成する弁尖や腱索などが粘液種様変性により変形することが原因です。

三尖弁は右心房と右心室の境にあり、一方向だけに開閉しそれぞれの部屋血液が逆流することを防いでいます。僧帽弁は左心系、三尖弁は右心系です。

 

三尖弁閉鎖不全症では、通常加齢に伴い僧帽弁とともに、弁尖が肥厚し腱索が伸びたり切れたりして弁の機能が低下し、しっかり閉じないようになってしまい、血液の逆流が生じてしまいます。このような後天的に起きる慢性房室弁膜疾患において、2~4割程度で、僧帽弁と三尖弁が同時に異常が見られると報告されています。

先天的に三尖弁異形成があることもあります。また犬糸状虫(フィラリア)の寄生により、三尖弁逆流が起こることもあります。

 

〇 症状は?

心臓は血液を送るポンプの役割をしており、血液の流れは全身から返ってきた血液が右心房、右心室を通り肺へ、その後肺から左心房に戻ってきて僧帽弁を通過、左心室から全身に送られます。三尖弁で逆流が生じると一度右心室に入った血液が、右心房に逆流してしまいます。僧帽弁閉鎖不全に併発して起きている場合以外は、はじめは無症状であり、逆流が進行すると元気消失、食欲不振、運動不耐といった症状がみられるようになります。

右心系で血液のうっ滞は、血液の流れとして全身から返ってきた血液が右心房に入るので、全身で液体成分が漏れ出します。おなかの中(腹腔内)で液体が漏れ出すと腹水が貯留します。また体表で液体が漏れ出すことにより、浮腫が起こることもあります。

肺高血圧に伴う失神といった症状もでることがあります。

〇 診断は?

三尖弁閉鎖不全症では血液の逆流に伴って心雑音が出現してくるので、聴診にて発見されることが多いです。他にも身体検査所見では頚静脈の拍動が三尖弁閉鎖不全症のみが起きている場合は通常、はじめは無症状であり、超音波検査により軽度の逆流が確認されることもあります。

超音波検査では、カラードップラー法により、三尖弁での逆流が実際に画像で確認可能であり、拡大している右心房が見える場合もあります。腹部超音波検査では腹水の貯留の有無を確認することが重要であり、肝臓の腫大が見られることもあります。

レントゲン検査では右心系の拡大が確認されます。僧帽弁閉鎖不全との併発が見られる場合は肺水腫の有無も確認します。

血圧測定や、心電図検査も組み合わせて病状を把握する場合もあります。

〇 治療は?

いくつかの薬を組み合わせて治療します。治療は内科治療、主に飲み薬であり、僧帽弁閉鎖不全の治療で使用される薬とほとんど同じです。血圧を調節する薬、収縮力を改善する薬を使用し、腹水が認められる場合は、利尿剤などを使用します。腹水のコントロールが内服ではうまくいかない場合は、腹水を抜去することがあります。少量の腹水は通常抜去することはありませんが、大量の腹水により、呼吸が抑制されたり、食欲が低下したり、運動を制限する場合は腹水を抜去します。

この三尖弁閉鎖不全症も完治することはないため、生涯にわたって投薬治療が必要です。また症状に応じて治療薬が追加されます。

 

 


 

8/9(月)~8/11(水)は休診

8/9~11までは休診いたします。

僧帽弁閉鎖不全症

今回は犬の心臓病~僧帽弁閉鎖不全症~について解説します。

僧帽弁閉鎖不全症


僧帽弁閉鎖不全症は心臓病の中で最も多く発生する病気です。ただ僧帽弁閉鎖不全は僧帽弁がしっかり閉じれない症状を表している用語であり、病名ではありません。肥大型心筋症拡張型心筋症などの心臓病でも、病状によっては僧帽弁閉鎖不全を起こします。一般的には、高齢の小型犬において、僧帽弁が粘液種様変性を起こして発生することが多く、今回はこの小型犬の僧帽弁閉鎖不全症について説明します。

肥大型心筋症はこちら
拡張型心筋症はこちら

〇 原因は?

小型犬の僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁を形成する弁尖や腱索などが粘液種様変性により変形することが原因です。弁尖は弁自体を形成するいくつかの膜であり、腱索は弁尖を心筋につなぐ役割をしています。

心臓の弁には僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁があります。僧帽弁は左心房と左心室、大動脈弁は左心室と大動脈、三尖弁は右心房と右心室、肺動脈弁は右心室と肺動脈の境にあり、一方向だけに開閉しそれぞれの部屋血液が逆流することを防いでいます。

 

僧帽弁閉鎖不全症では、弁尖が肥厚し腱索が伸びたり切れたりして弁の機能が低下し、しっかり閉じないようになってしまい、血液の逆流が生じてしまいます。

この弁の変性は通常加齢に伴い発生する後天的な変化であり、徐々に進行していきます。逆流の程度によって症状がみられるようになります。

 

〇 症状は?

全くの無症状から始まります。この段階は定期健診による聴診や心臓の超音波検査によって発見されます。

上記のように心臓は4つの部屋に分かれており、全身から返ってきた血液が右心房、右心室を通り肺へ、その後肺から左心房に戻ってきて僧帽弁を通過、左心室から全身に送られます。僧帽弁で逆流が生じると、酸素が十分に送られずに運動時に疲れやすい、呼吸が早いといった症状がみられるようになります。

血液がうっ滞することにより左心房が拡大してきます。拡大した左心房が気管を刺激してしまい、咳がでることもあります。

重症になると安静時でも呼吸困難を起こすようになります。重症化してうっ血が進行すると、血液の流れとしては左心房の前に肺があるため、肺でも血液はうっ滞し、肺胞内に液体成分が漏れ出します。この状態を肺水腫といいます。肺水腫になった場合の主な症状は咳と呼吸困難であり、酸欠で失神することもあるような非常に命の危険がある状態です。老犬の咳は、人間の風邪のような呼吸器症状ではなく、命に直結する心臓病の症状であることが多いので注意してください。

不整脈による失神といった症状もでることがあります。

ISACHC心不全機能分類
 無症状 心不全症状なし(安静時、運動時)
Ⅰa 心疾患の所見あり 心拡大なし
Ⅱa 心疾患の所見あり 心拡大あり
 軽度~中程度の心不全
 強い運動や興奮で症状発現
 進行した心不全(重度心不全)
Ⅲa 安静時に心不全症状あり 通院可 肺水腫あり・なし
Ⅲb 肺水腫・ショックの管理のため入院
                         日本獣医生命科学大学竹村先生講義より

 

〇 診断は?

僧帽弁閉鎖不全症では主に血液の逆流に伴う心雑音が出現するため、聴診にて診断されることが多くあります。病状を細かく把握するため、さまざまな検査を行います。

超音波検査では、心雑音の原因がどこにあるのか実際に確認することができ、僧帽弁に異常がある場合、肥厚した弁尖や拡大した左心房、カラードップラー法で逆流が確認できます。

レントゲン検査では心陰影の拡大が確認できますが、特に咳が見られる場合はレントゲン検査を行うことが重要です。咳の原因がうっ血性心不全による肺水腫によるものか、その他の理由によるものか確認します。

血圧を測定することも必要ですが、動物ではなかなか正確な血圧を測定することは困難です。失神などの症状が認められる場合は不整脈の有無を心電図検査で確認します。

〇 治療は?

表に示した分類に応じていくつかの薬を組み合わせて治療します。治療は内科治療、主に飲み薬で行います。血圧を調節する薬、収縮力を改善する薬、肺水腫のリスクがあるようであれば利尿剤などを使用します。

加齢に伴う病気であり、心臓を完治させる薬はないため、心臓の負担を軽減する薬を生涯にわたって投与します。始めは1種類から、ステージによっては5種類くらい投与する場合もあります。

重度心不全を示すステージⅢでは肺水腫や不整脈に対する治療のため酸素室での入院管理が必要です。入院時は利尿剤、収縮力を改善する薬を注射で投与します。

 


初期はほとんど無症状であったり、加齢による変化と感じられる程度の症状であるため、発見が遅れてしまうことも・・・。また進行しても症状が咳であるため、呼吸器疾患と勘違いされて、〝風邪かな?〟と様子をみられている間に、命に関わる肺水腫が一気に進行してしまう場合もあります。

早期に発見し、治療を開始することにより心臓の寿命を大きく延ばすことができるため、シニア期には定期的な健康診断が重要です。まずはご相談ください。

拡張型心筋症

今回は犬の心臓病~拡張型心筋症~について解説します。

拡張型心筋症


心筋症には、拡張型心筋症と肥大型心筋症拘束型心筋症があり、犬の心筋症の多くは拡張型心筋症です。心筋症は生まれつきの先天的な病気ではなく、後天的に心臓の筋肉に異常がおこる病気です。

肥大型心筋症はこちら

〇 原因は?

以前は原因不明とされていましたが、現在はさまざまな要因が拡張型心筋症に関与することがわかっています。

犬種としてはドーベルマン・ピンシャー、ボクサーで特に問題となり、他にもグレート・デーン、ゴールデン・レトリバーなどの大型犬で多く発生します。大型犬以外ではコッカー・スパニエルが好発犬種です。

家族性に発生する遺伝的な要因も報告されています。

大人のドーベルマン犬タイプの緑の芝生の上に横たわり、テニスボールを ...

年齢は5~7歳の中高齢でよく見られます。

甲状腺機能低下症などが原因となっていることがあるため、基礎疾患がないか確認して、基礎疾患がある場合はそちらの治療を行う必要があります。

〇 症状は?

拡張型心筋症は、心筋が薄くなって収縮力が低下する病気です。症状は無症状から突然死を起こすほど急激な症状を示す場合までさまざまです。

肥大型心筋症のページでも説明した通り、心臓は全身から返ってきた血液を肺でガス交換した後、全身に送るポンプの役割をしています。

拡張型心筋症になると心臓はうまく収縮することができずに、ポンプの機能が低下し、酸素が十分に送られずに息切れや呼吸困難を起こします。疲れやすい、元気がない、食欲がない、呼吸が早いといった症状がみられるようになります。

左心不全になると、肺水腫や胸水が認められることがあります。また右心不全になると、腹水貯留が起こります。

不整脈も比較的多くみられ、失神、虚脱といった倒れてしまうような症状がでることがあります。特にドーベルマン・ピンシャーやボクサーは不整脈を起こしやすいようです。

〇 診断は?

拡張型心筋症は必ずしも不整脈や心雑音が確認されるわけではないので、聴診だけでは診断できません。

特に初期には無症状であることも多くさまざまな検査を総合的に判断し、診断する必要があります。

診断にはレントゲン検査と超音波検査が有用です。特に無症状の場合は健康診断として行った超音波検査で発見されることがあります。

超音波検査が診断には最も有用で、薄くなった心筋と収縮力を失って拡張した心臓を確認することにより診断します。心雑音が聴診されている状態では血液の逆流が描出されます。

レントゲン検査では心陰影の拡大が確認されます。うっ血性心不全を起こしている場合は、胸部・腹部のレントゲン検査で胸水や肺水腫、腹水の貯留を確認します。

不整脈有無は心電図検査で確認します。不整脈があるかどうかは、病状を把握するうえで重要になります。

〇 治療は?

段階によっていくつかの薬を組み合わせて治療します。治療は内科治療、主に飲み薬で行います。

重度の場合は心不全による肺水腫や不整脈に対する治療のため酸素室が必要になることも多く、入院が必要です。入院時は飲み薬だけでなく、注射による投与も行います。利尿剤や抗不整脈薬、収縮力を改善するため強心剤を使用します。

完治する病気ではないため、生涯投薬が必要な病気です。

 


初期は無症状であったり、症状があっても軽度であるため、〝年齢によるものかな?〟と思ってしまうことも・・・。また身体検査や血液検査だけでは診断できない病気であるため、気づいたときには重症になっていることが多い病気です。できるだけ早期に発見できるよう、異常かなと感じたらすぐにご相談ください。