猫腸コロナウイルス感染症

今回感染症シリーズ第六回。
今回は猫の感染症~猫腸コロナウイルス感染症~について解説します。

猫腸コロナウイルス感染症


猫腸コロナウイルス感染症は下痢症状を主とする消化器症状を示す感染症です。
〇 猫ヘルペスウイルス感染症
〇 猫カリシウイルス感染症
〇 猫クラミジア感染症
〇 猫白血病ウイルス感染症
〇 猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症

〇 原因は?

原因は猫コロナウイルス(Feline coronavirus,FCoV)の感染です。FCoVは、主に経口的に生体に侵入、特に感染猫とトイレが共通であったり、濃厚な接触があったりして感染するとされています。腸上皮細胞に感染することにより症状を示します。
通常数カ月感染が続きますが、自然に体からウイルスは排除されます。

ただ一定数の猫では生涯にわたって感染が成立し、ずっとウイルスを排出するため注意が必要です。

〇 症状は?

腸コロナウイルスは腸上皮細胞に感染し増殖するため、消化器症状を示します。ほとんどの場合、無症状であることが多いですが、症状を示す場合も下痢のみであり、症状は軽度です。食欲が低下したり、元気が消失したり、嘔吐したりといった症状はあまりありません。ただ症状が出る場合は比較的長期にわたって出ることが多く、数カ月下痢が持続することもあり、先ほど書いたように生涯にわたって感染が成立する場合は下痢が治まらないこともあります。

▪ 消化器症状
▪ 下痢
▪ 長期化することも

〇 診断は?

院内の検査ではコロナウイルスを検出する方法がありません。外部の検査センターによって行う、糞便のPCR検査によってウイルスを検出する方法で診断します。通常の下痢の治療に反応しない場合は検査が必要です。

〇 治療は?

治療はコロナウイルスに特異的な治療はありません。消化器症状に対する対症療法により治療を行います。

 


猫腸コロナウイルス感染症は感染を予防するためのワクチンもなく、特別な治療法もありません。ほとんど軽症で終わりますが、なかに持続感染して長期に症状が続いたり、慢性化して生涯にわたって症状が出て、ウイルスを排出することがあります。また猫伝染性腹膜炎ウイルスへの突然変異も報告されており、注意が必要です。

現在流行しているCOVID-19新型コロナウイルスとは異なるウイルスですので、人への感染を心配する必要はありません。