肥大型心筋症

今回は猫の心臓病~肥大型心筋症~について解説します。

肥大型心筋症


猫で見られる心臓病は主に心筋症であり、心筋症には肥大型心筋症、拘束型心筋症、拡張型心筋症、分類不能型心筋症などのさまざまなタイプが確認されますが、その6割程度が肥大型心筋症です。心筋症は生まれつき先天的な病気ではなく、シニアになってでる後天的な病気です。

〇 原因は?

原因は詳しくはわかっていません。ただ遺伝性である可能性があるといわれています。

特にメイン・クーン、ラグドール、アメリカン・ショートヘアで多く発生します。比較的、大型猫には注意が必要だと思います。もちろん雑種猫や他の猫種にも多く見られる病気です。

家族性に遺伝する可能性は十分ありますので、親や兄弟に見られた場合は、定期的に検診したほうがいいでしょう。甲状腺機能亢進症や高血圧症が関連している可能性も示唆されています。

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〇 症状は?

肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が分厚くなる(心肥大する)病気です。症状は無症状から突然呼吸困難を起こすほど急激な症状を示す場合までさまざまです。無症状で心雑音のない場合でも疾患を持っている子が13%いるとも報告されています。

心臓は全身から返ってきた血液を右心房で受け取り、右心室から肺に送り出し、血液中に酸素を取り込み、左心房、左心室から全身に送るポンプの役割をしています。心肥大があると拡張することができず、心臓のスペースがなくなり、ポンプの機能が低下し十分な血液循環が行えません。

そのため酸素が十分に送られずに息切れや呼吸困難を起こします。疲れやすい、元気がない、食欲がない、呼吸が早い、口を開けて呼吸をする、失神するといった症状がみられるようになります。

うっ血性心不全に伴い、肺水腫や胸水が確認されたり、血栓が起きることもあります。血栓は主に後肢に分岐する血管に形成されるため、後ろ足が動かないといった症状がでます。また腎臓に血栓が形成され、腎不全になることもあります。

〇 診断は?

聴診で心雑音が聞こえる場合もありますが、聴診では異常が検知されないことも多くあります。3割程度は心雑音が確認されないと報告されています。また不整脈を伴うこともあります。

無症状の場合、健康診断を行った際に、超音波検査やレントゲン検査で見つかることがあります。レントゲン検査では大きな心陰影が確認されます。うっ血性心不全の状態では、胸水や肺水腫といった胸部レントゲンの異常が見られます。心電図検査では、不整脈を確認します。

心臓の超音波検査で、分厚く肥大した心筋が確認されれば確定診断となります。同時に左心房が拡大している像や、血栓の像が確認されることもあります。

〇 治療は?

治療は内科治療、つまり飲み薬がメインです。症状に合わせていくつかの薬を組み合わせて治療します。完治する病気ではなく、治療を行っていても進行していくため、生涯投薬が必要です。調子がいいからと投薬を忘れてしまうと、すぐに悪くなってしまうので、忘れずに投薬をしっかり行いましょう。血栓がある場合、危険度が非常に高くなります。そのためリスクがある場合は、血栓の予防を行います。無症状の場合は何度か再検査を行い、治療の必要があるのか判断する必要があります。

 


シニア期には比較的多くみられる病気です。〝最近少しげんきがなかったり、食べる量が減ってきたけど、年齢のせいかな?〟と思った場合は、心臓病を疑って検査することもいいかと思います。血液検査での心臓の簡易検査もありますので、健康診断の際に調べることをおススメします。